原 浩恭(はら ひろやす)
売上高のみを見ていると崩壊していく。
From:原 浩恭(株式会社 歯科専門 集患アウトソーシング)
売上=単価×数量
コンビニでもレストランでもスポーツジムでも売上はこのように分解できます。
単価↑×数量↑ → 売上↑
単価↓×数量↓ → 売上↓
単価↑×数量↓ → 売上↑↓
単価↓×数量↑ → 売上↑↓
となります。
とある町に、商品を仕入れて売る、このような商売をしている経営者がいました。
商品1個あたりの販売価額は1,000円。
年間の販売数量は10,000個。
年間の売上高は10,000,000円(@1,000円×10,000個)です。
ある日、販売数量を増やしたい経営者は次のように考えました。
販売価額を10%下げて(@1,000円→@900円)売上を増やしたい!
販売部長であるあなたへ質問してきました。
「何個売れば売上UPになるか?」
現在 @1,000円×10,000個=10,000,000円
今後 @900円×11,112個=10,000,800円
11,112個以上販売できれば売上UPとなりそうです。
経営者は言いました。
「では、目標販売数量は11,112個以上!みなさんお願いしますよ!」
と、判断するところから崩壊が始まります。
どういうことなのでしょうか。
商品の原価が1個あたり400円だとしましょう。
在庫、固定費などその他の要件は全て無視します。
この時、この商品の損益計算書は次のようになります。
売上高 10,000,000円(@1,000円×10,000個)
原 価 4,000,000円(@400円×10,000個)
利 益 6,000,000円
次に、値下げして11,112個を売り上げた場合ですが、
売上高 10,000,800円(@900円×11,112個)
原 価 4,444,800円(@400円×11,112個)
利 益 5,556,000円
売上はUPしたはずなのに444,000円も利益が減っています。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
説明いたします。
先ほどの内容を次のように考えてください。大切なのは商品1個あたりの利益です。
販売価額1,000円の頃、この商品は「1個売れば600円の利益が出る商品」でした。
※販売価額1,000円−原価400円
ところが、10%の値引きが入ることによって「1個売れば500円の利益が出る商品」に変わったのです。
※販売価額900円−原価400円
1個売れば600円の利益がでるはずの商品が、500円の利益しかでない商品に変わったのですから販売数量をもっと増やさなければ減益です。
1個売って500円の利益が出る商品で値下げ前の利益6,000,000円を確保するとなると、なんと12,000個(6,000,000円÷500円)も販売しなければなりません。
10%の値引きなのに販売数量は20%増しです。
売上高 10,800,000円(@900円×12,000個)
原 価 4,800,000円(@400円×12,000個)
利 益 6,000,000円
ここでは考えませんが、販売数量を増やすと諸々のコストも上がる傾向があります。
追加の広告宣伝費、追加の販売員の人件費、輸送コストの増大、保管コストの増大などです。
これら増大するコストまで考えると販売数量は12,000個よりさらに必要になるでしょう。
値下げはとても体力を削る方法です。
確かに、販売価額を下げることにはお客様を惹きつける効果もあるのですが、値下げはこのようにコントロールが難しい経営判断です。
同時に原価も適切に下げることができればいいのですが、仕入れの値下げ交渉は相手(取引先)にとっては売上の減少につながることですから簡単にはいきません。
売上だけを見ず、必ず利益を見るようにしましょう。そして、利益は必ず1人あたり、1個あたり、1時間あたりなどのように分解して見るようにしましょう。
歯科医院経営にとどまらず、どのようなアクションによって売上をあげていくかの決断は経営者にとっての重要な仕事です。単価でしょうか?数量でしょうか?成功している歯科医院の院長先生は考えに考え経営の舵を切っています。
ただ目の前に流れてくる毎日をこなすだけの経営から、戦略をたて戦術を駆使して戦う歯科医院経営をやっていきましょう。小さな歯科医院ほどこの考え方が大切です。ひとりでできないことでも一緒にやればできます。先生はひとりっきりで戦うだけではなく多くの仲間とともに戦うこともできるのです。
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PROFILE
原 浩恭(はら ひろやす)
株式会社 歯科専門 集患アウトソーシング
コンサルティング部門 医業収入アップコンサルタント
明治大学卒業。
歯科医院を数多く顧問に持つ税理士法人2社に在籍後、株式会社歯科専門集患アウトソーシングに入社。
前職では歯科医院専門担当者として年間医業収入が2億円を超える歯科医院を数多く担当し、歯科医院が成長していく過程を熟知している。
得意分野はA.P.O.manager(経営数値管理ソフト)を使ったデータ分析。課題を把握して確実に成果を狙っていく。