川上 裕也(かわかみ ゆうや)
感情の交差点
From:川上 裕也(株式会社 歯科専門 集患アウトソーシング)
ここ最近、「退職代行」や「静かな退職」といった言葉がニュースやSNS、あるいは実際のコンサルの現場でも耳にする機会が増えました。
• スタッフが突然LINEで退職を伝えてくる
• 責任のある仕事は避けたがる
• 目の前の与えられた業務だけを淡々とこなす
• 成長意欲や上昇志向が見えにくい
こうした若い世代の働き方や考え方に、戸惑いや不満を感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。
しかし、それは必ずしも
“やる気がない”
“最近の若い人は受け身すぎる”
といった本人の性格だけが原因ではないのかもしれません。
むしろ、「そうせざるを得ない職場環境」が、【気が付かないうちに静かに作られてしまっている】こともあると考えています。
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“静かな退職”が増えている背景には、スタッフの内面が職場の中で「孤立している」状況があると感じます。
• スタッフが、目の前の業務に追われ続けている
• 忙しさの中でスタッフ同士の関わりが薄れる
• 誰かが困っていても「忙しそうだから」と声をかけられない
• うまくいったことも褒め合う余裕がない
• 良いことが合っても、誰とも喜びを分かち合えない
こうした状況になってくると、“感情が交わらない職場”へといつの間にか変わってしまって
人間関係が希薄になりすぎ、
明確な役割やタスクがなく、
良くも悪くも評価されることがない
ため、仕事にやりがいを持てなくなり、「毎日淡々と働き、やがて静かに辞めていく人」を増やしてしまう原因となりがちなのでは、と考えます。
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一方で、スタッフが定着し、育ち、売上も安定している歯科医院には共通点があります。
それは、“感情が交わる場面”が日常にあるということです。
• スタッフ同士や患者さんとも距離感が近く、状況・情報を共有できている
• 小さな成長を見逃さず、「よくなってきてるよ」と声をかけられる
• ミスを指摘はするけど責めずフォローする雰囲気がある
• 院長やチーフが「何のためにやっているのか。何を期待しているか」を伝え続けている
こうした職場には、感情のやりとりと意味の共有が根付いています。
いわゆる組織への「エンゲージメント(職場への愛着やつながり)」を育てる土台があります。
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退職代行が流行るのは、
「辞めることすら、職場とまともに対話できない関係」
になっているからです。逆に言えば、悩んだときに本音で話せる関係性があれば、離職は自然と減っていくのではないでしょうか。
• スタッフのやる気がないのではなく、「やる気が育つ土壌」をつくる。
• 1on1などで感情が交わるポイントを意図的につくる。
• 院長自身が「育成の主語」になること。マニュアルやチーフ任せにせず、関与を持つこと。
スタッフが辞めるときに直接言える関係性になっているか。
悩んでいるときに正直に相談できる関係性になっているか。
スタッフが職場へのつながり、帰属意識が生まれにくい環境にいつの間にかなってしまって「ただ仕事をこなす人材」にならないように感情が交わされる環境を意図的に設計することが必要なのかもしれません。

PROFILE
川上 裕也(かわかみ ゆうや)
株式会社 歯科専門 集患アウトソーシング
コンサルティング部門 医業収入アップ シニアコンサルタント
北九州市立大学卒業後、4つの会計事務所で約20年間、経営者の良きパートナーとして200件以上のクライアントを担当。
3件目の会計事務所で、弊社代表である渥美がGMを務める大型歯科医院の担当者となる。
当初、医業収入2億円規模だった歯科医院を、担当していた3年間で5億円以上に成長させる過程に携わった。
今までに関わった歯科医院からは、マーケティングとマネジメントを駆使して「院長個人とクリニックにお金が残るようになった!」「自信を持って経営判断を下せるようになった!」「業績が一気に回復した!」・・・などの絶大な信頼を獲得。
全国のクリニックから寄せられる経営相談に応え、東奔西走している。
趣味は、バスケットボール。