川上 裕也(かわかみ ゆうや)
実務家であること。経営の本質は「泥臭い」ことの中に。
From:川上 裕也(株式会社 歯科専門 集患アウトソーシング)
経営や戦略と聞くと、どこか「アイデアの導入」や「先進的なマーケティング戦略」といった華やかな要素に目が行きがちです。
「他と差別化する斬新なアイデア」や「尖ったブランディング」が成功を決めるように見えるかもしれません。
しかし、現実の経営はそんなにスマートなものではありません。
本当に結果を残していく経営者や組織は、派手さではなく「地道さ」「継続力」で勝負しているのです。
経営の本質は「面倒なことをやり抜けるか」
歯科医院を運営していると、毎日のように「面倒なこと」が押し寄せます。
- スタッフの退職や急な欠勤への対応
- クレーム処理やスタッフ間のトラブル
- 請求やレセプト返戻といった事務作業
- 在庫管理や設備の不具合対応
- 人材採用やスタッフ教育の実務
どれも地味で、繰り返し起こり、誰もやりたがらないことばかりです。
しかし、この「誰もやりたがらないこと」を淡々と処理し続ける姿勢こそが、経営者としての信頼を積み重ねていきます。
特になにか新しい取り組みをするとき。
誰もが手探りの状況でトライを始めますが、ひとつアクションが進むたびに検討と対応のフェーズが出てくる状況になりがちで、進捗しないことにストレスと不安を溜めがちです。
しかし、ここを面倒くさがらずに地道にクリアしていくことで経営者・組織としての【地肩】【足腰】が強くなっていきます。
戦略は、泥に揉まれてこそ
たとえば「新規患者を増やそう」「自費率を上げよう」と、立派な戦略を立てたとしても、現場では予定通りには進まないものです。
- 新しい治療を導入したらスタッフがついて来られない
- せっかく採用した歯科衛生士が短期間で辞めてしまう
- 患者さんがキャンセルを繰り返して予約が埋まらない
- SNSでの集客が思ったほど成果につながらない
こうした出来事は、どの医院にも日常的に起こります。
机上の戦略は、現場のリアルに揉まれて「泥臭い試行錯誤」を繰り返さないと行けない現実にぶつかります。
なかなか進まない、先が見えない、逃げ出したくなるようなこの状況。
しかし、そこで踏みとどまり、自分を律して誰よりも先に動けるかどうか。
経営者ととして地肩が強い、足腰が強いタイプの人は、こういう状況をクリアしてきた「実務家」です。
「やりたいこと」と「やらなければならないこと」のギャップ
歯科医師として「やりたいこと」は本来、臨床スキルの向上、臨床に集中して患者さんを治すことかもしれません。
しかし、経営者になると「他のやらなければならないこと」が一気に増えます。
- スタッフの採用面接や給与交渉
- 医療機器のリース契約や銀行との資金調達交渉
- ホームページの改善や広告戦略の見直し
- スタッフ教育やチームビルディング
こうした業務は、臨床の楽しさとはかけ離れているかもしれません。
しかし、この理想と現実とのギャップを飲み込みながらも最適解を選び続けることが、経営者としてのスキルを成長させる唯一の道です。
経営者に問われるのは、「どこまで自分を律し、面倒なことをひとつひとつ解決していくか」という胆力と言えます。
凡庸なことをやり切れるかが、成功の分かれ目
経営者はつい「もっと良い方法があるはずだ」と新しいアイデアを探したくなります。
また、時間のかかることはスタッフや業者に任せる、ということもあるでしょう。
もちろんアイデアや挑戦は大切です。
また医院が成長していく段階で業務を専門家に任せたりアウトソーシングをすることも必ず必要になります。
しかし、持続的に成果を出していく経営者や組織こそ、
経営者や組織が「まずやってみる」ことが組織の型になっていて凡庸に見えることを徹底的にやり抜いています。
このことが情報に振り回されず、トラブルにも強い「自分で対応できる」チームを作っているのです。
- 当たり前の診療フローをきちんと守る
- 毎日の予約確認やリコールの声かけを欠かさない
- クレームや返戻に即座に対応する
- スタッフ面談を習慣化して信頼関係を築く
これらは目立たない取り組みですが、続けることで確実に医院の力になります。
イエローハット創業者の鍵山秀三郎氏が説いて書籍にもなっている「凡事徹底」は、誰にでもできる当たり前のことを、誰にでもできないくらい徹底する、ということです。
愚直に積み重ねた先にしか、持続して成果を出せることはありません。
「今やっている小さなこと」が、必ず未来の医院を支えます。
今日も一歩、地道に積み重ねていきましょう。

PROFILE
川上 裕也(かわかみ ゆうや)
株式会社 歯科専門 集患アウトソーシング
コンサルティング部門 医業収入アップ シニアコンサルタント
北九州市立大学卒業後、4つの会計事務所で約20年間、経営者の良きパートナーとして200件以上のクライアントを担当。
3件目の会計事務所で、弊社代表である渥美がGMを務める大型歯科医院の担当者となる。
当初、医業収入2億円規模だった歯科医院を、担当していた3年間で5億円以上に成長させる過程に携わった。
今までに関わった歯科医院からは、マーケティングとマネジメントを駆使して「院長個人とクリニックにお金が残るようになった!」「自信を持って経営判断を下せるようになった!」「業績が一気に回復した!」・・・などの絶大な信頼を獲得。
全国のクリニックから寄せられる経営相談に応え、東奔西走している。
趣味は、バスケットボール。