渥美 貴浩(あつみ たかひろ)
LINEでのコミュニケーションが生む「すれ違い」の正体。
From:渥美貴浩(株式会社 歯科専門 集患アウトソーシング)
近年、歯科医院の現場でもスタッフ間や院長とのやり取りにLINEを活用するケースが増えています。
確かに、手軽でスピーディー。
ちょっとした連絡や写真の共有には非常に便利です。
しかしその一方で、
「LINEで伝えたつもりだったのに誤解された」
「スタンプで“了解”が来たけど、本当にわかっているのか不安」
といった相談を受けることも少なくありません。
実際に直接話してみると、
「ああ、そういうことだったんですね」
と一瞬で解決することが多いです。
こうした“LINEのすれ違い”は、どの歯科医院でも多かれ少なかれ起こっている現象です。
テキストで「伝える」ことの難易度。
そもそも私たちは、
「文章で正確に伝える技術」
を学んできていません。
学校教育では、小論文や感想文を書くことはあっても、相手を動かす・納得させるといったビジネスコミュニケーションとしての文章表現は体系的に学ぶ機会がありません。
そのため、診療やマネジメントのスキルが高い先生でも、LINEでのやり取りになると「うまく伝わらない」「誤解される」と悩まれるのは自然なことです。
文章は、話し言葉のようにトーンや感情、間(ま)が伝わりません。
だからこそ、慎重に言葉を選び、構成を考える必要があります。
日本人の「察する文化」とLINEの相性。
日本人の多くは「空気を読む」「察する」といった非言語的なコミュニケーションを重視します。
一方、LINEはテキストベース。
言葉以外の情報がほとんど伝わりません。
たとえば「わかりました」という一言も、実際は状況によって意味がまったく異なります。
- 本当に理解している「わかりました」
- 渋々納得している「わかりました」
- 実は理解していないが取り急ぎ返信した「わかりました」
文字だけでは、その差が判別できません。
結果として、誤解や温度差が生じ、関係性に微妙なズレが生まれることもあります。
こうした文化的背景を踏まえると、日本人にとってLINEのようなツールは決して万能なコミュニケーション手段とは言い切れません。
“効率化ツール”が“時間の浪費”に変わる瞬間。
「効率化のために導入したLINEが、逆に時間を奪っている」というケースも多く見られます。
たとえば、面と向かって話せば5分で済む内容が、LINEでのやり取りだと30分、場合によっては1時間以上かかる。
相手の返信を待つ間に他の業務が入り、結果的に話が前に進まない。
さらに、感情が読み取れないために余計な誤解やストレスが生じ、チームの雰囲気まで悪くしてしまうこともあります。
「“便利なツール”を活用しているつもりが、いつの間にか“非効率の温床”になっている」
そんな状況は、意外と少なくありません。
LINEは「使い方次第」で成果が変わる。
誤解のないように申し上げると、私はLINEを否定しているわけではありません。
問題は「使い方」と「目的」です。
LINEが有効なのは、
- 決定事項や業務連絡の共有
- シフトや休診日の通知
- 画像・資料などの共有
といった“記録に残すべき連絡”や“情報共有”の場面です。
一方で、
- 感情や意図を伴う話し合い
- 相手の理解を確認しながら進めたい内容
- 誤解を生みやすい繊細なテーマ
こうした場面では、直接話すか電話で話す方が圧倒的に正確で、結果的に早いケースがほとんどです。
「送る」ではなく「伝わる」コミュニケーションへ。
歯科医院の運営は、チームワークの上に成り立ちます。
院長とスタッフ、スタッフ同士の信頼関係がなければ、患者満足も生産性も上がりません。
だからこそ、「送った」ではなく「伝わったかどうか」。
この視点を持つことが非常に重要です。
LINEは確かに便利なツールです。
しかし、便利さに依存すると、“人間同士の温度”が薄れていくリスクもある。
ツールを使うのは良いこと。
でも、“ツールに使われていないか”を一度見直してみる価値があるのではないでしょうか。
PROFILE
渥美 貴浩(あつみ たかひろ)
株式会社 歯科専門 集患アウトソーシング
代表取締役社長
医業収入2億円以上の歯科医院向けにマーケティングとマネジメントをアウトソーシングする「株式会社 歯科専門 集患アウトソーシング」を経営。
令和5年11月 現在。
クライアントの平均医業収入は3億2千8百万円。
1歯科医院での1ヶ月の新患数300名オーバーの実績を持つ。
また、1歯科医院での1ヶ月間のインビザライン無料相談176件獲得、全クライアント合計での1ヶ月間のインビザライン無料相談1,100件以上獲得など、自由診療マーケティングでも数多くの結果を出してきた。
スタッフ80名、医業収入9億円規模の大型歯科医院の元事務長。
