マネジメント


From:原 浩恭(株式会社 歯科専門 集患アウトソーシング)


利益がでているのにお金が減っている?

このような一瞬「えっ?」となるような相談を受けることがあります。もしかしたらこのブログを読んでいる先生の中にも「わかるなー」という方がいらっしゃるかもしれません。

今回は、医療法人ではない個人開業の先生の場合のお話しをいたします。たった1つのとても簡単なことをするだけで、適切な生活費、目標とすべき売上がわかる方法も解説いたしますので最後までお付き合いください。

よし!今年は増収増益!1年間頑張ったなぁ・・・

あれ?

預金残高、去年より減ってない?

このような経験をされたことがある先生、いらっしゃいませんか?目指していたのは増収増益で預金が潤沢にある未来だったはずなのに、どうしてこのようなことになってしまったのでしょう。

話を単純にするために次のような例で考えてみましょう。

前提1:年間の売上5000万円、経費4000万円、利益1000万円。
前提2:借入金あり。毎月の元金返済額は40万円(年間480万円)。
前提3:1月1日の預金残高は1500万円。
前提4:減価償却費や貸倒引当金、税金等はここでは無しとします。

これだけを見ると、12月31日の預金残高は利益によって1000万円増え、借入金の返済によって480万円減り、結果として2020万円になるかのような気がしますよね。しかしこの考えには1点抜けている出費があります。

【預金残高の推移】
1500万円 1月1日の預金残高
2500万円 1年間で稼いだ利益1000万円をプラス
2020万円 1年間で返済した借入金元金480万円をマイナス
????万円 1年間で・・・

抜けている出費とは、院長先生による預金引き出しです。

仮に年間900万円を預金口座から引き出しているとすると、利益で1000万円増えても借入金の返済額480万円と引き出し額900万円の合計で1380万円の支出となり、年間ではマイナス380万円となります。

【本当の預金残高は?】
1500万円 1月1日の預金残高
2500万円 1年間で稼いだ利益1000万円をプラス
2020万円 1年間で返済した借入金元金480万円をマイナス
1120万円 1年間で院長先生が口座から引き出した額900万円をマイナス

このように、利益がでていても預金残高が減っていく原因のほとんどは、借入金の元金返済と院長先生ご自身での預金引き出しにあります。

【利益がでているのに預金残高が減ってしまう原因】
・借入金の元金返済
・院長先生ご自身での預金引き出し

いやいやそんなこと当然でしょと思われるかもしれませんが、私の経験上そのように思われている先生は3割ほど、5割の先生は毎月好きなタイミングで好きな金額の引き出しを続けており、年間で自分がいくら引き出しているのかを把握されていません。

引き出す金額も月によってバラバラで、50万円しか引き出さない月もあれば、80万円引き出す月もある、60万円引き出したけど子供の塾の夏期講習代を払うから追加で30万円引き出した等ルールもなくバラバラです。

【好きなタイミングで好きな金額を引き出す】
1/28 60万円引き出し
2/10 25万円引き出し
2/22 50万円引き出し
3/25 80万円引き出し
4/11 10万円引き出し
4/29 60万円引き出し・・・

もし先生が、1年間増収増益で頑張ってきたのに預金残高が増えない・・・なぜだ・・・と思われているのであれば、もうそんな状況からは脱出しましょう。働けど働けど預金が減っていくのは嫌ですよね。

やることはたったひとつです。

この方法を試すと、適切な生活費、目標とすべき売上が自動でわかります。新たに準備するものはなくて今すぐ始めることができます。

それは、

月に1度だけ、事前に決めたタイミングで、事前に決めた金額を引き出すようにする。

たったこれだけです。これを定額生活費といいます。

例えばスタッフ給与の支給日に、院長先生もあたかも自分も医院から給与をもらっているかのように自分自身の個人口座へ事前に決めた一定額を振り込むのです。

その一定額はいくらにすればいいのでしょうか。

それは奥様とも話し合われてください。大丈夫です。先生方は100%この段階で「うわーいくらなんだろう・・・嫁さんに聞いてもわかるかな・・・」と途方に暮れます。我が家はひと月にこれだけあれば足りるという金額(生活費にローンの支払いに生命保険、子供の学費に塾代、飲み代や趣味の費用から投資貯蓄にいたるまでの全ての支出を月単位に平均化した金額)を把握することからです。そしてその金額が80万円ならばこの80万円で始めてみましょう。

毎月、スタッフへ給与を支払うタイミングで自分の口座へも80万円を振り込む。そしてこの金額以外にはクリニックの預金口座へは手をつけない。

【スタッフの給与支給日に自分にも事前に決めた金額を振り込む】
受付Aさん 18万円振り込み
助手Bさん 20万円振り込み
歯科衛生士Cさん 23万円振り込み
歯科衛生士Dさん 22万円振り込み
自分 80万円振り込み

これを繰り返すと預金口座の残高が重要な意味を持ち始めます。

もし、毎月の預金残高が減っていくならば、それは今の収益規模に対して定額生活費として引き出す金額が多すぎるということです。つまり、収益規模に対して生活水準が高すぎですよということを教えてくれています。

逆に、毎月の預金残高が増えていくならば、それは今の収益規模に対して引き出す金額をもう少し増やしても大丈夫ということです。または、その状態を続けて医院にお金を残して次の設備投資やスタッフの確保にまわしてもいいでしょう。

預金残高が増えも減りもしなければ、それは今の収益規模と自分の生活水準が見合っているということです。今後家計での支出が増えなければ今のままでもやっていけるでしょうが、この状況は今以上に家計の支出が増える場合には今の収益規模では耐えることができないということでもあります。子供が私立の医学部歯学部に進学したら・・・などのような状況が想定されるのであれば好ましい状況とは言えません。また、見合っている状況ですので少しでも収益規模が縮小していくと途端に資金繰りが厳しくなりますのでやはり好ましい状況とは言えないでしょう。

【定額生活費と預金残高の推移の関係】
・預金残高が減っていく
ひと月で医院が生み出す現預金に対して定額生活費が多すぎる。
・預金残高が増えていく
ひと月で医院が生み出す現預金に対して定額生活費が少なめで適切。
・預金残高が増えも減りもしない
ひと月で医院が生み出す現預金に対して定額生活費が見合っている。

借入金の元金返済額は契約で縛られているので動かすことができません。しかし自分自身で預金口座から引き出す金額については変更することができます。まずはこの取り組みをスタートさせ、医院の収益規模と家計の関係を確認されてください。

その上でもし現預金残高がマイナスとなるのであれば早急に対策しなければなりません。対策は、家計の支出を抑えて(生活水準を下げる)定額生活費の金額を預金残高の減少が止まる水準まで減額するか、定額生活費による支出をまかなえるまで収益を上げていくかの2択になります。

【現預金残高がマイナスとなる場合の対策】
・家計の支出を抑えて(生活水準を下げる)定額生活費の金額を預金残高の減少が止まる水準まで減額する
・定額生活費による支出をまかなえる水準まで収益を上げていく

1番の解決は収益を上げることです。それも単発ではなく継続できる収益獲得力の強化です。しっかりと収益を上げ歯科医院経営を安定したものへ変えていきましょう。

我々コンサルタントが願っているのは単なる収益の上昇ではなく、その後ろにある院長先生ご家族の更なる発展と繁栄です。しっかりと収益を上げ安定的にお金を家計へ渡していく、開業して良かったと思えるその日までともに頑張っていきましょう。



原 浩恭(はら ひろやす)

株式会社 歯科専門 集患アウトソーシング
コンサルティング部門 医業収入アップコンサルタント

明治大学卒業。

歯科医院を数多く顧問に持つ税理士法人2社に在籍後、株式会社歯科専門集患アウトソーシングに入社。

前職では歯科医院専門担当者として年間医業収入が2億円を超える歯科医院を数多く担当し、歯科医院が成長していく過程を熟知している。

得意分野はA.P.O.manager(経営数値管理ソフト)を使ったデータ分析。課題を把握して確実に成果を狙っていく。

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