原 浩恭(はら ひろやす)
単価改善
From:原 浩恭(株式会社 歯科専門 集患アウトソーシング)
蝉の音がけたたましく響き渡る公園を娘と散歩していると、露天にかき氷屋が出ているのを見つけた。
種類は4つ。いちご300円、レモン300円、ブルーハワイ300円、レインボー350円。派手に飾られたPOPのおかげでレインボーがものすごく目立つ。レインボーは赤色を1/3、黄色を1/3、青色を1/3かけるだけの仕様で、いちごもレモンもブルーハワイも1Lあたりの仕入値が同じだと仮定すると、レインボーが売れてもかかる原価は1/3+1/3+1/3でいちご等と変わらない。
だがしかし50円高い。
お嬢ちゃん何色にしよっかーとウチの子へニコニコと声をかけてくるアウトレイジにでてきそうな店主を見つめ私は考えた。
赤かけて、黄色をかけて、青かける。
この手間が50円、ここは流されずにいちご・・・そう考えた時に「虹みたいなのがいいー」という娘。その言葉がでた以上、父親としてレインボーを断る理由が「50円高いこと」以外になく後手となった私はレインボーを1個買うことにした。
「レインボー、400円でも売れるんじゃないですか?」
コスト面だけで考えると300円という値段設定でも利益がでるが、レインボーのプレミアムを30円とみるか50円とみるか一気に100円とみるか、店主は経験に基づく市場調査結果を頭の中に持っていた。
「400円は誰も買わんな笑。30円は安すぎる。50円は買う。適当やないんよ笑。」
今日は単価の話です。
経営系のセミナーに参加すると、自費率を上げましょう、接遇が大切です、ファン患者を増やしましょう等とよく耳にします。中でもよく聞くのは増患セミナーでしょうか。新患数130%とか新患数200%などのうたい文句を見ると、ああこれは素晴らしいなと思いますよね。確かに新患数がその通り増えるといいでしょう。私もそう思います。
売上は単価×数量で示され、これを歯科医院で考えると患者1人あたり単価×患者数となります。
歯科医院経営でお悩みの院長先生にお話しを伺うと、最初にみなさんがおっしゃるのが「新患を増やして欲しい」というものです。上の式だと患者数のところです。たしかに目に見えて患者数が増えるというのは嬉しいし、なんと言っても安心感がでてきますよね。経営系のセミナーで繁盛するのがこの分野だというのも納得がいきます。
だけど、もっといい方法があるとしたらどうでしょうか?
正攻法は第一に単価の改善です。なぜなら単価の改善の方が歯科医院経営に与えるインパクトが大きく確実だからです。
例えばここにあらゆる条件が同じ2つの歯科医院があるとします。
※わかりやすいように数字を簡略化します。
①A歯科医院
医業収益 6,000(単価10の患者が600人)
材料技工 960(16%)
給与賞与 1,200(20%)
他経費等 2,640
医業利益 1,200(20%)
②B歯科医院
医業収益 6,000(単価10の患者が600人)
材料技工 960(16%)
給与賞与 1,200(20%)
他経費等 2,640
医業利益 1,200(20%)
【条件変更】
A歯科医院では患者1人あたり単価を1.2倍に改善(10→12)
B歯科医院では患者数を1.2倍に改善(600→720)
①A歯科医院
医業収益 7,200(単価12の患者が600人)
材料技工 960(13.3%)
給与賞与 1,200(16.6%)
他経費等 2,640
医業利益 2,400(33.3%)
②B歯科医院
医業収益 7,200(単価10の患者が720人)
材料技工 1,152(16%)
給与賞与 1,440(20%)
他経費等 2,640
医業利益 1,968(27%)
患者1人あたり単価を1.2倍に改善したA歯科医院の方が、6.3ポイント利益率が良く、432万円利益の額が多いという結果になりました。
このように、患者数の増加は医業収益の増加とともに材料代の増加、技工料の増加、診る患者が増えることで人を増やしていかなければならないゆえの人件費の増加など、同時に無数のコスト負担が発生し、増収幅に対して増益幅が小さくなるという性質を持っています。じゃあ、患者を増やしたあとに単価を増やしたら良いんでしょ?とおっしゃる先生、その通りです。ただし本当に患者数が増えていればですが。
患者を増やすというのは自分たち(自分、スタッフ、既存患者)以外の登場人物(新しい患者、新しいスタッフ)を必要とするシナリオです。完全にはコントロールできない外部の条件が入ってくる以上、自分たちの100の努力に対して100の効果が約束されないことを常に考えておかなければなりません。
一方で単価の改善はその逆です。経営改善の王道は、最短で最大の効果がでるように取り組むことに間違いありませんが、絵に描いた餅で終わらず「確実」であることが最も大切なことです。まずは既存の登場人物で収益改善が可能な取り組みに注力しましょう。
歯科医院経営にとどまらず、どのようなアクションによって売上をあげていくかの決断は経営者にとっての重要な仕事です。単価でしょうか?数量でしょうか?成功している歯科医院の院長先生は考えに考え経営の舵を切っています。
ただ目の前に流れてくる毎日をこなすだけの経営から、戦略をたて戦術を駆使して戦う歯科医院経営をやっていきましょう。小さな歯科医院ほどこの考え方が大切です。ひとりでできないことでも一緒にやればできます。先生はひとりっきりで戦うだけではなく多くの仲間とともに戦うこともできるのです。
A.P.O.managerでは歯科医院の収益を見える化し、収益向上に直結するポイントを数字で明らかにしていきます。ここで大切なのは、その明らかになった数字をどう読むか、その数字をどう捉えるかどう扱うかはその数字に接する人次第ということです。私たちコンサルタントは日頃から多くの歯科医院の数字に接し、最短最速で最大の効果があがるポイントを研究しています。もしあなたの歯科医院の収益がよくわからない理由で上がっている下がっているのであれば、その理由はA.P.O.managerを使うことで明らかになるでしょう。
PROFILE
原 浩恭(はら ひろやす)
株式会社 歯科専門 集患アウトソーシング
コンサルティング部門 医業収入アップコンサルタント
明治大学卒業。
歯科医院を数多く顧問に持つ税理士法人2社に在籍後、株式会社歯科専門集患アウトソーシングに入社。
前職では歯科医院専門担当者として年間医業収入が2億円を超える歯科医院を数多く担当し、歯科医院が成長していく過程を熟知している。
得意分野はA.P.O.manager(経営数値管理ソフト)を使ったデータ分析。課題を把握して確実に成果を狙っていく。