三鬼 明香(みき あすか)
「スキル」は「センス」を越えるか?
From:松本 真由美(株式会社 歯科専門 集患アウトソーシング)
私たちは“言葉”を使ってコミュニケーションをしています。
今も昔も、言葉は人の感情を動かし・共感を呼び・意識や行動をも変えてしまう力を持っています。ホームページもブログも動画もSNSも…どんな表現でも、中心にあるのは言葉、文章です。それだけに、私たちマーケッター・セールスライターは非常に神経を使うところです。
よく、医院のブログやSNS運用についてご相談をいただくことがあります。その多くは「ライティングが苦手」「センスがないから書けない」といった内容ですが、私個人的には「センス」で文章を書いている感覚はあまりありません。
伝えたいメッセージ・話の組み立て・使う言葉、すべてに意図と根拠があると思っているからです。
感覚で書くのではなく、「最適解」を出す。
言葉のプロといえば、お笑い芸人の方からも多くのことを学ぶことができます。つい先日、M-1グランプリ2010王者「笑い飯」の哲夫さんが書かれた本を読んだのですが、こんな一節がありました。
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”ある状況を説明するのに、最適な正しい語句を使いたいんです。例えば、頭に鳩の糞を落とされた六十五歳の男性について喋るとします。この男性を、「おっさん」と呼ぶか、「おじさん」と呼ぶか、「おじいさん」と呼ぶか、どれが最適だと思いますか。一番おもしろい状況を演出するために、どれか一つ言葉を選ばなければならないわけです。”
〜中略〜
“この状況では、おじさん大なりおじいさん大なりおっさんだと考えております。綺麗さと汚さとのコントラストです。”
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漫才という限られた時間の中で使われる言葉、話の順番は計算し尽くされています。言葉選びや話の流れ、一つ一つに根拠があって、無駄がありません。
哲夫さんはプロのお笑い芸人の方ですからもちろん特別なセンスもお持ちだと思いますが、ここには文章を書こうと思っている方にとってたくさんのヒントが詰まっています。
なぜ、あなたの文章は伝わらないのか?
先ほどの例のように、文章や話を組み立てる上では最適な言葉や話の流れがあります。
しかしながら、ライティングにあたってこのあたりの整理ができていないと、狙う的があまりに広すぎて「何から書いていいかわからない」「どんなふうに書いていいか分からない」「これで良いのか分からない」と苦手意識を感じるようになってしまいます。
あなたにも、次の中で思い当たることがないでしょうか?
【1.リサーチが十分でない】
私たちは「頭の中にある情報」以上のことはいくら考えていても出てきません。良いアウトプットのためには良いインプットをする必要があります。事前調査として行うリサーチの目的は大きく分けて3つ、
①マーケットへの理解
②商品への理解
③顧客への理解
に分けられます。もしも、「執筆が止まってしまう」「筆が進まない」という場合は、いずれかのリサーチが不十分なのではないでしょうか。
リサーチは内容も重要です。例えば③ではペルソナを決めるというだけではなく、患者様の抱える悩みを、患者様本人より深く理解できることが理想的です。私たちは何か大切な判断をしなければならないとき、知識や経験の少ない相手に指示を仰ぐことはありません。
【2.いきなり書き始めている】
パソコンに向かっていきなり書き始めようとしているとしたら、「構成」を行うことで執筆効率を上げられる余地があります。
構成では伝えたいメッセージをどんな順番で・どんなタイミングで切り出すかということをあらかじめ検討します。いわゆる「起承転結」です。
構成を理解する上で最も分かりやすい例はやはり「通販」ですね。たくさんの情報を効果的な順番で出し、しかるべきタイミングで購入を促します。
構成を行い【1】でしっかり集めた情報を整理するとともに、漏れやムダな繰り返しの無い文章を組み立てていく必要があります。
【3.表現力の問題】
「表現力」を身につけるといっても、小説家のように叙情的な文章を・・・という意味ではありません。
「文章がものすごく長い」「主語と述語が離れすぎている」といった文章は、たとえリサーチや構成が良くても「伝わらない文章」になってしまいます。
ただし、分かりやすさを追求するあまりに箇条書きのような文章になったり、同じような言い回しが続くと読み手の関心が薄れ、飽きられてしまうこともあります。相手にとって文章を読む価値があり、読んだ後にどんな行動をとって欲しいかまでイメージして執筆できるとベストです。
【4.デザイン性が低い】
文章を使って何かを表現するとき、使えるのは文字だけではありません。写真やグラフ、イラストなどを取り入れると、全体が見やすくなり相手の理解度を一気に高めることができます。
例えば「歯石の除去」について文字だけで解説するのと、写真や動画を使うのでは患者様の理解度は全く違うはずです。
「きらびやかに飾る」という意味ではなく、見やすく・理解を深めてもらうために、最低限デザインや全体の体裁を整えることは必要です。
【5.読み返していない】
最後に、誰かに読んでレビューを貰うという工程も必要です。話の組み立て、文章のクセ、メッセージが正しく相手に届いているかなど、感想を貰いながら修正を加えて仕上げていきます。
はじめのうちは、家族や友人など多くの方にレビューを貰うところから始めてもOKです。できることならペルソナに近い人物の感想を貰えると良いでしょう。
骨の折れる作業に感じるかもしれませんが、これをすると文章はどんどん良くなっていく一方なので、是非前向きに取り組んでいただけたらと思います。
センスを語るより「ひたすら書く」こと
ライティングには正解がなく、0から書き始めるのは途方もない作業だと思われるかもしれません。
ですが、今回お伝えしたような流れで執筆を進めていくと、伝えたいメッセージが定まり、伝える順番・ペルソナに伝わる言葉、言い回しも定まってくるので、文章をパズルのように組み立てていくイメージが湧くのではないでしょうか。
よく「ライティングはセンスではなく技術」と言われていますが、個人的にはこうしたことがその所以なのではないかと思っています。
ただ一点だけ注意したいのは「ノウハウを知っているだけではスキルは絶対に上がらない」ということです。
ライティングのスキルを上げるために何より大事なことは「ひたすら実践する」こと。いくら知識を持っていても、実際にかけるかどうかは全く別物です。意図をもって書いて、レビューをもらって、直して・・・という地道な作業が必要なのです。
P.S.
「そうはいっても何から始めたらよいやら」という場合は、是非【5】の読み返し・レビューをお勧めします。
過去に書かれた文章を誰かに読んでもらい、読みやすさやどんな感想を持ったかなどヒアリングしてみてください。
理解してもらえなかったり、自分の意図しない伝わり方をしたり、そもそも全部読んでもらえないかもしれません(^^;)
新たな発見があるはずですので、是非取り入れていただけたらと思います。
PROFILE
三鬼 明香(みき あすか)
株式会社 歯科専門 集患アウトソーシング
マネジメント部門 マネジャー
歯科衛生士