マネジメント


From:原 浩恭(株式会社 歯科専門 集患アウトソーシング)

「面接ではすごく感じが良かったんです。それが、働き始めてみたら…」

採用について院長先生と話しているとよく耳にする言葉です。

面接では受け答えもしっかりしていた。

笑顔もあり、他のスタッフとうまくやっていけそうに見えた。

ところが、入職すると、

指示されたことが身につかない。

報告や相談がない。

患者さんへの対応にも不安がある。

「自分には人を見る目がないのかもしれない」

そう思われる先生もいらっしゃいます。

しかし、面接で感じる「いい子そう」という印象と、実際に仕事ができるかどうかは別の話です。

その場の印象に頼る面接では、入職後の働きぶりを正確に見抜くことは簡単ではありません。

人は、一つ良いところが見えるとその人全体まで良く見てしまいがちです。

笑顔が感じよかった。

受け答えがはきはきしていた。

身だしなみが整っていた。

それだけで、

「仕事も丁寧そうだ」

「患者さんにも優しそうだ」

「スタッフとも上手にやれそうだ」

と、まだ確認していない部分まで高く評価してしまいます。

もちろん、歯科医院では感じの良さも大切です。

ただし、面接で明るく話せる人が、忙しい診療中にも周囲を見て動けるとは限りません。

最初の印象によって、その後の質問の内容まで変わります。

「この人は良さそうだ」と思えば、良い面を確認する質問が増えます。

反対に、第一印象が良くなければ、欠点を探す質問が増えていきます。

面接は応募者を見極めているようで、最初の数分で抱いた印象を、その後の時間を使って確認しているだけになりやすいのです。

面接後の採用理由として、

「話しやすかった」

「素直そうだった」

「医院の雰囲気に合いそうだった」

という言葉がよく出てきます。

どれも曖昧です。

面接は、医院が求める役割を果たせそうかどうかを確認する場です。

応募者の話に合わせて自由に質問する面接は柔軟に見えます。

しかし、応募者ごとに質問が違えば公平に比較できません。

一方、全員に同じ質問をし、あらかじめ決めた基準で評価する面接は、入職後の働きぶりを判断しやすくなります。

質問を事前に決める。

評価項目を決める。

回答を点数にする。

基本は、この三つです。

質問も評価基準も毎回違う状態では、「今回の人は話しやすかった」「前回の人は少し暗かった」という印象を並べるだけになります。

1、全員に同じ質問をする。

質問は事前に決め、全員に同じ内容で行います。

特に有効なのは、本人の考えではなく、過去に実際にとった行動を聞く質問です。

たとえば、

「患者さんへの対応で困った経験と、そのときの対応を教えてください」

「先輩から注意を受けた経験と、その後どのように改善したかを教えてください」

「忙しい時間帯に仕事が重なったとき、どのような順番で対応しましたか」

といった質問です。

「患者さんに優しくできますか」と聞けば、ほとんどの人が「できます」と答えます。

具体的な経験を聞くことで、その人の判断や行動が見えやすくなります。

2、評価項目を先に決める。

面接後に「この人はどうだったか」と考えるのではなく、何を見るのかを先に決めておきます。

たとえば、

質問に具体的に答えられるか。

分からないことを確認できるか。

指導後に改善した経験があるか。

周囲と協力して働けるか。

応募理由や退職理由に一貫性があるか。

などです。

それぞれを5点満点で評価し、面接直後に採点します。

時間がたつと、回答の内容より「感じが良かった」「少し暗かった」という印象だけが残りやすくなります。

3、相談する前に各自で採点する。

可能であれば、院長先生だけでなくチーフや受付責任者など複数人で面接します。

ただし、面接直後に感想を言い合うのは避けます。

誰かが先に「良かった」と言うと、ほかの人もその意見に引っ張られるからです。

特に院長先生が高く評価すると、スタッフは違和感を言い出しにくくなります。

まずは各自で採点し、その後に評価を見比べます。

点数が違った場合は、どの回答をどう受け取ったのかを確認します。

その違いの中に、採用判断の材料があります。

採用の失敗で失うのは、求人広告費や紹介料だけではありません。

面接、入職手続き、制服や備品の準備、教育にかけたコストと時間。

短期間で退職すれば、残されたスタッフの負担も増えます。

そして、もう一度求人を出し、採用と教育をやり直さなければなりません。

紹介会社を利用していれば、採用の失敗1件で数十万円単位の損失になることもあります。

一方、質問リストと評価表を作るのに、大きな費用はかかりません。

もちろん、面接の方法を変えても、採用の失敗を完全になくすことはできません。

それでも、

「感じが良かったから採用する」

という状態から、

「医院が求める行動ができそうかを、回答の内容から判断する」

という状態には変えられます。

共通の質問と評価基準を用意し、その上で直感を使う。

そのひと手間が、「面接では良かったのに」という採用の失敗を減らしてくれるのです。

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原 浩恭(はら ひろやす)

株式会社 歯科専門 集患アウトソーシング
コンサルティング部門 医業収入アップ シニアコンサルタント

明治大学卒業。

歯科医院を数多く顧問に持つ税理士法人2社に在籍後、株式会社歯科専門集患アウトソーシングに入社。

前職では歯科医院専門担当者として年間医業収入が2億円を超える歯科医院を数多く担当し、歯科医院が成長していく過程を熟知している。

得意分野はA.P.O.manager(経営数値管理ソフト)を使ったデータ分析。課題を把握して確実に成果を狙っていく。

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